建築を学ぶ皆さんは、BIMというツールを聞いたことがあるでしょうか?聞いたことがある人は「3Dで図面を描くツール」だと思っている方が多いかもしれません。しかし実際の建築の現場では、BIMはもっと大きな役割を担っています。設計・積算・施工をひとつのデータでつなぎ、建築の仕事そのものを変える仕組みとして、今まさに進化の真っ只中にあります。そして、業界に先駆けてBIMを推進してきたのが株式会社アーキテクト・ディベロッパー。今回は、建築本部本部長の佐藤紀一さんにお話を伺いました。
【株式会社アーキテクト・ディベロッパー】
東京・銀座の歌舞伎座タワーに本社を置く不動産会社。首都圏を中心に年間約100棟・2000室ほどの集合住宅を手がけ、管理戸数 は50,000戸超、13年連続で入居率99%以上を誇ります。最大の特徴は、土地の活用提案から設計・施工管理、そして賃貸管理まで、 住まいに関わるすべてを一社で完結できる一貫体制です。
そもそも、BIMって何ですか?詳しく教えてください。
BIMとは「Building Information Modeling」の略で、学校でBIMを学んだ人は、3Dでモデルを作って立体的に確認する、というところまで経験している方が多い印象です。それはBIMの大切な機能のひとつです。ただ、実務の世界ではBIMはそこで終わりません。
まず、聞き馴染みのあるCADとの違いからお話しします。CADは「線」で図面を描くツールです。平面図・立面図・断面図といった図面をそれぞれ個別に作成します。一方BIMは、建物をひとつの立体モデルとして作り、そこに材料の種類・数量・コストといったあらゆる情報を入れ込むことができます。CADが「図面を描く道具」だとすれば、BIMは「建物の情報をまるごと管理する仕組み」と言えます。
それをきちんとやれば、設計から積算まで一気通貫でつながっていく。ひとつのモデルが、設計・積算・施工という複数の工程をつなぐ情報の基点になるんです。BIMは「描くツール」ではなく、「建築の情報を扱う仕組み」だと、私たちは捉えています。
なぜBIMを導入しようと思ったのですか?また、どんな壁にぶつかりましたか?
国もBIMの普及に力を入れており、確認申請をBIMデータで受け付ける制度も始まろうとしています。時代の流れとして、取り組まないわけにはいかなかった。それが導入のきっかけです。
ただ、導入してみると理想と現実のギャップに直面しました。思ったように全員が同じ方向を向いてくれない、というのが最初の壁でした。積算部門には使い慣れたシステムがあって「今さら乗り換えられない」という声も出てくる。使いやすさと管理しやすさは反比例する、ということも実感しました。最初に決めたことにこだわりすぎず、現実を見ながら柔軟に対応することが大切だと気づきました。新しい技術は導入するだけでは機能しないのです。BIM導入は、その現実を突きつけてきました。
壁を乗り越えるために、どんな取り組みをしたのですか?
入り口のプランの段階からBIMに全振りしないと浸透していかない、という課題感がありました。そこで、各支店に分散していた設計のプランニング担当者を本社に集約し、一気に推進する体制をつくりました。大義があるので、やりましょうと。経営陣も後押しをして、組織を変えてまでも実直に取り組む姿勢を見せたことが推進力になりました。
この取り組みはBIMソフトのメーカーにも注目され、新バージョンの発表会で講演を依頼されるほどになりました。ここまで組織として取り組めている会社はなかなかない、と言っていただきました。建築業界もDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいますが、DXとは単にデジタルツールを導入することではありません。技術を活かすために、組織や仕事の仕組みそのものを変えること。結果がついてきているのは、実直にやり続けたからだと思っています。
BIMを導入して、実際にどんな成果が生まれましたか?
一番分かりやすい例が、積算との連携です。フローリングを例に挙げると、以前は床の面積から大まかに計算していたものを、BIMモデルの中で実際の貼り方をシミュレーションして、どの部屋で出た端材をどこで使えるかを視覚化できるようになりました。過発注による廃材が大幅に減り、建築コストの削減につながっています。年間100棟やるので、これは非常に大きな成果です。
設計・積算・施工が一つのモデルでつながることで、建築の仕事が効率化されていく。それぞれの工程が単独で動くのではなく、つながることで価値が生まれる。それがBIMの本当の力だと思っています。
実際に働く社員の方々は、BIMをどう感じているのでしょうか?
設計プランニングを担当している鈴木さん(2019年入社)は、学生時代はCADしか使っておらず、入社後にBIMへ移行した一人です。
「最初は『何だこれは』という感じで、何もわからなかったです。でも、慣れてしまえば本当に手に馴染んで。BIMだからできることがいっぱいあるなと思っています。以前、図面の色指定を逆に表記してしまうミスをしてしまうということがありましたが、今はBIMで視覚的にお客様と一緒に確認もできるので、同じミスは起きにくいと思います。」
施工管理担当の濱野さん(2021年入社)も現場目線でこう話します。
「CADの図面よりも鮮明に見えるようになった印象があります。仕事の効率は確実に変わってきていると感じますね。」
これからのBIM、そして建築の未来はどうなっていくと思いますか?
まだ道半ばです。現在、積算の自動化率は目標の約50%まで到達しています。鉄骨工場での加工に使うパーツ図面の自動生成にも取り組んでいます。今は熟練の職人さんが手作業で書いていて、1週間かかっている作業です。これをBIMのデータから自動で生成できるようになれば、その作業が大幅に短縮できる。鉄骨の搬入までの待ち時間が減り、現場全体の工程を早めることにもつながります。建設業界では現場で働く人手不足が課題になっていますが、こういった取り組みが、その解決策の一つになると考えています。
最終的には全員がBIMを使える環境を目指しています。大切なのは最先端を走ることではなく、結果を出し続けること。いずれ、BIMなしで建築を語ることはできない時代になっているはずです。学校で学んだBIMの知識は、必ず実務で活きてきます。その先に、一緒に挑戦できる場所がここにあります。ぜひ一度、私たちの仕事を覗いてみてください。
