働き方の選択肢が増え、転職も珍しくなくなった今の時代において、社会に出る前のみなさんが「一つの会社で働き続けた先の姿」を想像することは、かつてより難しいものになっていると思います。
多くの人は「10年って、長いな」と感じるかもしれませんが、キャリアをつくるにあたっては、決して遠すぎる目標ではありません。
現場で任される範囲が広がり、仕事の見え方が変わり、成果と信頼関係が積み上がる。10年とは、その実感を得ることができる“ひと区切り”のタイミングでもあります。
現場で任される範囲が広がり、仕事の見え方が変わり、成果と信頼関係が積み上がる。10年とは、その実感を得ることができる“ひと区切り”のタイミングでもあります。
今回は、新卒入社から10年間、ひとつの会社で経験を積み重ねてきた先輩の言葉を通して、働き続けることで得られるものや、時間の中で変わっていく仕事との向き合い方、そしてキャリアの育まれ方について考えていきます。
お話をうかがったのは
株式会社オフィスインテリア 大友智さん
修成建設専門学校卒業 2015年入社
この業界に進んだ理由
子供のころからテレビのリフォーム番組や建物の写真を見ることが好きでした。高校の進路イベントで専門学校の先生から「建築は“自分がこれを建てたんだ”と、後世に自慢できる仕事」と聞いたことが、建築専門学校に進んだきっかけです。就職活動ではやりたいことがいろいろとある中で、「設計も施工管理も、営業もできる」というオフィスインテリアの働き方に惹かれて、入社を決めました。
ターニングポイント
入社して5年ほど経ったとき。別会社が立ち上がるタイミングで、それまで頼りにしていた先輩たちが抜けることになりました。自分が責任を負う立場になってはじめて、力のなさとスキル不足を思い知ることになり、それが「このままじゃだめだ」と奮起する転機になりました。
仕事観の変化 Before/After~10年で何が変わった?~
Q1:コミュニケーションの取り方は?
▶ Before(入社当時)
A:一人で何とかしようと思っていました
A:一人で何とかしようと思っていました
もともと人と話すことが大の苦手で、先輩や職人さんに質問するのもひと苦労でした。だからできるだけ人を頼らず、自分で何とかしようという気持ちが大きかったです。
▶▶ After(現在)
A:周囲を巻き込めるようになり、みんなにも支えられています
A:周囲を巻き込めるようになり、みんなにも支えられています
わからないことは、早く相談して解決しないと現場が回らないと気づいてからは、自分から声をかけるようになりました。すると、職人さんたちが驚くほど協力してくださり、人間関係がぐっと深まっていったんです。10年の間には何度も壁にぶつかりましたが、時間をかけて協力業者さんとの信頼関係を築いてきたからこそ、続けてくることができたと思っています。
Q2:仕事の基準は?
▶ Before(入社当時)
A:上司の顔色をみて仕事していました
A:上司の顔色をみて仕事していました
正直なところ「誰のための仕事か」を深く意識していませんでした。上司に言われたことをこなすことが最優先で、「上司がこう言っているからやる」という感覚が強かったと思います。お客様を中心に考えるという発想も、頭では理解していたつもりでしたが、実感としては結びついていませんでした。
▶▶ After(現在)
A:お客様の満足を追求しています
今は、仕事の向き先がはっきりと変わりました。お客様ありきで、「どうすれば喜んでいただけるか」を自然と意識するようになりました。以前は理解しきれていなかった会社の方針も、経験を重ねる中で腑に落ちるようになりましたし、最近は働きやすさに向けた取り組みにも主体的に関わっています。働きやすい環境をつくるため、会社も努力しているんだと気づけたのも、10年という経験があってのことだと感じています。
Q3:仕事に対する責任感は?
▶ Before(入社当時)
A:目の前のことをこなすのに精一杯でした
責任を感じていなかったわけではありませんが、正直、入社して2年くらいは記憶があまりないんです(笑)。言われたことをこなすのに必死で、指摘や注意をされても、「何が違うのか」分からない。また同じ失敗をして、ようやく「ああ、こういうことか」とつながる。その繰り返しでした。与えられた役割をこなす意識が中心だったと思います。
▶▶ After(現在)
A:チーム全体のことを考えています
A:チーム全体のことを考えています
経験を積むにつれて「自分がやるしかない」という場面が増え、それに伴って周囲から頼られることも多くなりました。担当以外の領域でも、曖昧な理解のままでは迷惑をかけるかもしれないという意識が強くなり、自ら調べ、考える習慣が身についたと思います。責任感は「意識して持つ」というより、役割の広がりとともに自然と形成されていったという感覚です。
今後の目標と、これから社会に出る学生さんへのメッセージ
設計が絡む現場や最新の仕上げ材を扱う仕事にもっと深く関わって、面白い仕事を追求していきたいです。同時に、その経験や感覚を、下の世代にも共有していきたいですね。現場の仕事はどうしても個人の経験や技量に依存しやすい側面がありますが、考え方や判断の基準を少しずつでも次の世代へ渡していくことが、結果的に現場や組織の安定につながると感じています。
学生のみなさんに伝えたいのは、「続ける=我慢」ではない、ということです。続けると、自分の中で仕事の意味合いが変わってきます。その時はわからなくても、ふとしたときに成長を実感すると、頑張ってきた過去の自分を褒めたい気持ちにもなります。
できないことや苦手なことがあって当たり前ですし、むしろ仕事を通じて変わっていく部分の方がずっと大きいです。10年という時間は決して短くありませんが、振り返れば「あっという間だった」と感じる部分もあります。焦らず、目の前の経験を一つずつ自分の力に変えていってほしいと思います。
